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夜行列車メモリーズ
■「ブルートレインものがたり」 種村直樹 〜第2回 ご先祖さまのプロフィール

「鉄道ジャーナル」1973年(昭48)7月号より

※以下、料金・名称・呼称・役職名などは原則として「鉄道ジャーナル」掲載当時のまま。ただし「注」は今回の掲載にあたり著者が加えたものです。

ご先祖さまのプロフィール

 ブルートレインを語るには、国鉄の特急列車発展の足どりをトレースしておかねばならない。はじめて特別急行列車が走ったのは、1912年(明治45)6月15日、新橋(いまの汐留)−下関間。1・2列車と名づけ、関釜航路経由の欧亜連絡をうたい、一・二等だけの編成で展望車も連結した。25時間08分、表定速度45km/h。客車には座席番号をつけて座席券を発行、列車長が乗務した。当時としてはきわめて画期的で、様々なサービスを盛りこんだ列車であった。列車長制度は1919年(大正8)まで続く。

 これより先、1903年(明治36)には、鉄道国有化前の山陽鉄道が神戸−下関間に特急列車を運転、1906年(明治39)国鉄も新橋−神戸間に最急行列車を走らせた。しかし国鉄百年史年表は、前者も最急行と記して特急と区別、後者は急行列車の初めとしている。

 さて、1913年(大正2)には東海道本線の複線化が完成、翌1914年(大正3)には東京駅が開業した。1921年(大正10)になると大津(いまの膳所)−京都間のショートカットが行なわれ、1・2列車は1時間のスピードアップ。1923年(大正12)7月、東京−下関間に三等特急3・4列車を新設、特急の大衆化へ第一歩を踏み出した、このとき特急料金も制定され、所要時間は22時間40分。1・2列車とともに東海道は昼、山陽路は夜の時間帯だった。

 1926年(大正15)9月23日未明、下関ゆき特急1列車は山陽本線・安芸中野−海田市間で豪雨のためにくずれた築堤に乗り上げ寝台車が折り重なって脱線転覆、死者34人・重軽傷39人という特急史上初の大事故となった。

 1929年(昭和4)9月15日、全線のダイヤ改正と同時に1・2列車に〈富士〉、3・4列車に〈櫻〉と、はじめて特急に愛称がつき、まもなくトレインマークもかかげるようになった。戦後〈櫻〉は平仮名に変わったが、〈富士〉とともに、いまもブルートレインの愛称として受けつがれているわけで、ブルートレインのご先祖さまは1912年生まれの1・2列車ということになろう。

 この愛称は公募したもので、5600票ほどのうち日本のシンボル〈富士〉が1700票と3割を集めてトップ、〈燕〉〈櫻〉が800票台で続きベスト3。以下、〈旭〉〈隼〉〈鳩〉〈大和〉〈鴎〉〈千鳥〉〈疾風〉の順。第2位だった〈燕〉は、翌1930年(昭5)10月、スピードアップを主眼とするダイヤ改正でデビューした東京−神戸間の各等超特急列車に命名された。

 超特急〈燕〉は、丹那トンネル開通前で御殿場線まわりだったのにC51が東京から名古屋まで一気に走り、東京−神戸を9時間、東京−大阪を8時間20分で結んだ。このとき〈富士〉〈櫻〉も2時間30分あまりスビードアッブしている。1931年(昭和6)12月、東京−大阪間に臨時特急〈つばめ〉も登場した。

 1934年(昭和9)12月1日、丹那トンネル開通とともに超特急〈燕〉は東京−大阪間8時間運転となり、表定速度69.6km/hと、東海道全線電化完成の1957年(昭32)まで破られない記録を樹立。このダイヤ改正で、25年間も一・二等特急というエリートの座にあった〈富士〉に三等車を連結、〈櫻〉にも二等をつないで二・三等特急に衣替えしている。1937年(昭和12)7月になると、東京−大阪間に5本目の特急〈鴎〉を新設、特急の食堂車に冷房をとりつけた。

 この年、NHKの国民歌謡のひとつとして新鉄道唱歌が流れた。

 〜帝都をあとに さっそうと 東海道は特急の 流線 一路 富士 桜 燕の影も うららかに〜

 土岐善麿作詩・堀内敬三作曲の軽快な歌で、若き日の二葉あき子・伊藤久男らが唱い、コロンビアからレコードも出て全国で愛唱された。このころが戦前の特急列車の全盛期であった。

※文中特急「鴎」は本来正字にすべきところ、機種により文字化けの可能性もあるため便宜的に俗字を用いています(編集部)。

●「ブルートレインものがたり」は、直接取材のほか、つぎの資料を参考にしました。
『国鉄線』1957年(昭32)9月号、1958年(昭33)10・11・12月号/『国鉄通信』1966(昭41)8月22日号「ブルー・トレーンの歴史」など/『鉄道100景』上巻「動くホテル・ブルートレーン」/『列車年表』1972年(昭47)10月(国鉄本社列車課編)/『日本国有鉄道百年史年表』


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